「正しい姿勢で座っているつもりだけど、いつの間にか姿勢が悪くなっている。」
そんな経験はないでしょうか。
正しい姿勢で座ることが大事だとわかっていても、そもそも正しい姿勢がどういうものか、説明できる方は多くありません。
私はリラクゼーションセラピストとして10年近く、のべ10,000時間の施術をしてきました。「正しい姿勢を意識しているけど、上手くできているかどうかわからない」という話を度々耳にします。
この記事では、デスクワークでの座り方を厚生労働省の資料をもとにまとめました。
結論から申し上げると、腰痛の指針が基本としているのは「背筋を伸ばすこと」ではありません。背もたれに体幹を預けるのがポイントです。
- 椅子に深く腰を掛ける
- 背もたれで体幹を支える
- 足の裏全体を床につける
腰痛の指針に、「骨盤を立てる」「腰の角度は90度」という記載は見当たりません。
- 指針が示す座り方の基本
- よく言われる「正しい姿勢」との違い
- 机と画面の合わせ方
- 姿勢を変える間隔の目安
- 姿勢の崩れが続いたときに出てくる不調
正しい姿勢を保とうとして疲れてしまう方にこそ、最後までご覧いただきたい内容です。
指針が示す座り方の基本
座り方の基本は、腰痛の指針に3つ示されています。
順に見ていきます。
基本①|椅子に深く腰を掛けること
最初のポイントは、椅子に深く腰を掛けることです。浅く座ると背もたれに届かないため、体幹を支えるものがなくなります。
椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢を基本とすること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説」
指針では、深く腰を掛けること、背もたれ、足裏の3つがまとめられています。

全ての条件を満たさないと、正しい座り姿勢になりません。
基本②|背もたれで体幹を支えること
次のポイントは、体幹を背もたれに預けることです。
上半身の筋肉だけで支え続けると、その筋肉が先に疲れて正しい姿勢がキープしにくくなります。
長時間、椅座位姿勢を続けると背部筋の疲労によって前傾姿勢になり、また、腹筋の弛緩、背柱の生理的彎曲の変化や大腿部圧迫の影響も現れる。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説」
背中の筋肉が疲れた結果として、前かがみの姿勢が現れると記載されています。
姿勢が崩れるのは、意識の問題だけではありません。
基本③|足の裏全体を床につけること
さらに、足の裏全体が床に接していることもポイントです。
足が床に届かないと、届かせようとして浅く腰を掛けることになります。浅く座れば背もたれにも届かず、体幹を預ける場所がありません。
床に届かないときの考え方は、フットレストの選び方にまとめました。

かいデスクワークの方の背中に触れると、肩甲骨のあいだが硬くなっていることがよくあります!
座る時間の長さが関係していると感じていますが、座り方まで見ているわけではないので、原因までは判断できません。
「背筋を伸ばす」「腰は90度」は指針に書かれていない
ここで違和感を持たれた方もいるのではないでしょうか。よく紹介されている座り方と、腰痛の指針の内容は2つの点で異なります。
1つずつ確かめましょう。
違い①|腰の角度は直角に固定しない
「腰や膝の角度を90度に保つ」という説明をよく見かけます。ところが指針の解説は、腰の角度を固定することを基本としていません。
椅座位において腰の角度を90°に固定すると骨盤が後方に回転し、腰部の生理的後彎が減少する。重心が前方に移るため、腰背筋の活動性が高まる。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説」
腰の角度を直角に保つと重心が前に移り、背中の筋肉が働き続けることになります。


したがって、背筋を伸ばして座っているのに疲れやすくなるのです。
違い②|背筋を伸ばして支え続けない
もう1つの違いは、何で支えるかという点です。
姿勢矯正ベルトや姿勢をキープするクッションは、身体を外から支える道具にあたります。
指針が基本として挙げているのは、椅子の背もたれです。
道具を足すのではなく、すでにある背もたれを使うという順番になります。
矯正グッズについては、指針に記載がありません。使ってはいけないという意味ではなく、指針の範囲では確かめられないということです。



背筋を伸ばそうとして肩に力が入っている方は少なくありません。
その場合、椅子を変えたほうが早いかもしれません。
机と画面は身体に合わせる
正しく座れていても、机と画面の位置が合っていなければ姿勢は崩れます。高さの目安は3つです。
上から順に合わせます。
ポイント①|机の高さは肘の角度で決める
机の高さは、肘の角度で決めます。
腰痛の指針が、作業台の高さの目安として肘の曲げ角度を挙げているためです。
作業台や椅子は適切な高さに調節すること。具体的には、立位、椅座位に関わらず、作業台の高さは肘の曲げ角度がおよそ90度になる高さとすること。また、椅子座面の高さは、足裏全体が着く高さとすること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
先に机を合わせてしまうと、座面の高さがずれていきます。
高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合には、椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい。
引用:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインとその解説」
椅子、机の順番で合わせるのがおすすめです。
ポイント②|画面の上端は目の高さかやや下にする
画面は、上端が目の高さかやや下に来る位置に合わせます。
画面が低いほど視線が下がり、頭が前に出ていくためです。
ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。
引用:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
とくにノートパソコンでは、画面と机の高さを同時に満たすことが難しくなります。首まわりの不調は、デスクワークで首が痛いにまとめました。


ポイント③|高さを変えられない場合は道具を活用する
高さを変えられない机では、床から65cmから70cmが目安になります。
高さ調整ができない机又は作業台を使用する場合は、床からの高さはおおむね65cm〜70cm程度のものを用いることが望ましい。65cm及び70cmがそれぞれ女性及び男性が使用する場合に必要な高さのほぼ平均値となるためである。
引用:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインとその解説」
女性で65cm、男性で70cmが平均値です。調整できる椅子が使えない場合は、腰当てのクッションが代わりとして挙げられています。腰痛クッションの選び方と置く位置にまとめました。





机と椅子を一度合わせておくと、毎日あらためて意識する必要がなくなります。
ただ、在宅と職場で環境が違うことが多く、それぞれ合わせておくのがおすすめです!
姿勢は「保つ」より「変える」
ここまで正しい座り方について解説しました。
さらに腰痛の指針では、同じ姿勢を続けないよう求めています。
2つに分けて説明します。
1時間を超えて同じ姿勢を続けない
区切りの目安は1時間です。情報機器作業のガイドラインが、連続して作業する時間の上限として示しています。
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回〜2回程度の小休止を設けるよう指導すること。
引用:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
1時間という区切りのほかに、そのあとに取る時間と、短い中断も示されています。3つの数字の読み方は、デスクワークの休憩の取り方にまとめました。


なお、姿勢を整えるストレッチの手順は、ここでは紹介しません。
公的な資料に手順の記載が見つからないためと、痛みの出方によって動きも変わるためです。
座ったままでも姿勢は変えられる
毎時間かならず席を立てるとはかぎりません。腰痛の指針は、座ったまま姿勢を変える方法も挙げています。
この影響を避けるため、足の位置を変えたり、背もたれの角度を変えて後傾姿勢を取ったり、適宜立ち上がって膝を伸ばすほか、クッション等の腰当てを椅子と腰部の間に挿入する等、姿勢を変える必要がある。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説」
具体的には「足の位置」と「背もたれの角度」を変えることです。
背もたれを倒して後ろに傾く形でも、指針が挙げる方法に含まれています。



1時間おきに立てない方には、まず背もたれに寄りかかる時間をつくるようお伝えしています。
筋力を保つための運動の目安
ここまでは、座っているあいだにフォーカスを置きました。国の資料には、座り方とは別に運動の目安も示されています。
それぞれ見ていきます。
筋力トレーニングは週2〜3日が目安
筋力トレーニングは、毎日行う必要がありません。運動ガイドが、頻度を週2〜3日としているためです。
筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨する(週4メッツ・時の運動に含めてもよい)。
引用:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
歩く量の目安もあわせて示されています。デスクワークの運動不足にまとめました。





筋力をつけたいという相談を受けることはありますが、何をどれだけやるかまでは本格的なアドバイスを提供できません。
どれだけ負荷をかけるかは人によって変わる
身体の使い方によって、どの部位にどれだけ負荷をかけるかは変わります。ただし運動ガイドに、最適解は示されていません。
必要に応じて、運動指導の専門家に自分の状態にあった筋トレのプログラムについて相談しましょう。
引用:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
とくに、はじめはプロに一度確かめてもらうと、自分に合わない形で続けずに済みます。
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姿勢の崩れが続くと出てくる不調
姿勢の崩れが続いたとき、出てくる不調は部位によって変わります。
詳しい内容は、それぞれの記事にまとめました。
首の付け根から肩の上にかけて重くなる場合は、肩こりとして現れます。ほぐしても戻る理由は、デスクワークによる肩こりが戻る理由にまとめました。
肩甲骨と肩甲骨のあいだが重いときは、背中の筋肉が姿勢を支え続けた結果です。くわしくはデスクワークで背中が痛いをご覧ください。
画面が低いほど視線が下がり、首の後ろの筋肉で頭を支える時間が長くなります。デスクワークで首が痛いにまとめました。
腰については、立っているときより座っているときのほうが負担は大きくなります。デスクワークの腰痛対策にまとめています。
次の症状がある場合は、座り方を見直すより先に整形外科へご相談ください。
- 安静にしていても痛みが軽くならない
- 足にしびれや力の入りにくさがある
- 尻もちや転倒のあとに痛みが出た



姿勢を整えても痛みが引かないときは、姿勢以外の原因を疑うようにしています。
デスクワークの姿勢についてよくある質問
デスクワークの姿勢について、よく調べられている質問をまとめました。
- デスクワークで悪い姿勢とは?
-
前傾姿勢です。
背中の筋肉が疲れて前かがみになり、背骨のカーブが変わっていきます。腰の角度を直角に固定する座り方も、重心が前に移るため基本とはされていません。
- 姿勢を良くするグッズは必要ですか?
-
必ずしも必要ではありません。
国の資料では、腰当てのクッションと足台の2つが紹介されています。どちらも、調整できる椅子や机が使えない場合の代わりになります。選び方は腰痛クッションの選び方と置く位置にまとめました。
- デスクワークで疲れない姿勢はありますか?
-
どの姿勢でも、長く続ければ疲れてきます。
指針が求めているのは同じ姿勢を続けないことです。1時間を目安に変えてみてください。
- 姿勢を正すにはどうすればいいですか?
-
椅子→机の順番に自分に合う高さを設定してください。
背もたれに届かない椅子や、肘が浮く高さの机では、座り方だけを変えても戻ります。一度合わせておくと、しばらく設定せずに済みます。 - 肩がこらない姿勢はありますか?
-
特定の姿勢で決まるわけではありません。
首・肩・背中・胸まわりの疲れの積み重ねでこる傾向があります。まずは姿勢そのものを直すより、画面の高さを合わせるほうが手軽です。
- 姿勢が悪いとどうなりますか?
-
背中の筋肉が疲れて、前かがみが癖になります。
指針は、前傾姿勢が続くと腹筋がゆるみ、背骨のカーブも変わるとしています。現れる場所は、肩の上の重さ、肩甲骨のあいだの痛み、首の後ろの張り、腰の重さなどさまざまです。
まとめ:背もたれに預けて、1時間ごとに姿勢を変える
デスクワークの姿勢について、押さえておきたい点を振り返ります。
- 正しい姿勢は背筋を伸ばすことではなく、背もたれで体幹を支えること
- 腰の角度を直角に固定すると、背中の筋肉が働き続ける
- 机は肘の角度で、椅子は足の裏で高さを決める
- 1つの姿勢を保つより、同じ姿勢を続けないほうがよい
この記事の前提にあるのが、姿勢は意識だけで保てるものではないという点です。支える筋肉が疲れれば、姿勢は崩れていきます。
よく言われている「背筋を伸ばす」「腰の角度は90度」は、腰痛の指針の基本とは違います。指針が挙げているのは、背もたれに体幹を預けることです。
机と画面の高さは、一度合わせれば終わります。肘の角度と足の裏が目安です。
そのうえで、1時間を目安に姿勢を変えてみてください。安静にしていても痛むときや、足に症状があるときは、整形外科へご相談ください。



ここまでお疲れ様でした!正しい姿勢を保とうと頑張っている方ほど、肩や背中に力が入っている印象があります。
座っているあいだくらいは、背もたれに任せましょう!




