「気づけば、パソコンに向かっているだけで背中が痛くてつらい」
そんな辛い経験はありませんか。これまで多くのデスクワーカーの方の施術を担当してきましたが、背中の痛みも腰痛や肩こりなどと同様に、よく相談を受ける症状のひとつです。
この記事では、デスクワークの方を対象に仕事中に背中が痛くなる原因や、今日から実践できるセルフケアなどを、現場での経験を交えて解説します。
- デスクワークで背中が痛くなる原因について
- 今日からできる背中の痛みを和らげる対処法
- セルフケアだけで改善しない場合に見直すべき、睡眠環境と運動習慣について
本記事を読み終えるころには、背中の痛みの正体が分かり、対処法やセルフケアについて理解ができるようになります。
デスクワークで背中が痛くなる原因
ここでは、デスクワークで背中が痛くなる原因について3つのポイントを解説します。
- 長時間同じ姿勢による筋肉疲労と血流悪化
- 猫背・巻き肩が背骨や関節に与える負担
- 身体の歪み・重心バランスの崩れ
ひとつずつ見ていきましょう。
長時間同じ姿勢による筋肉疲労と血流悪化
同じ姿勢を長時間続けると、背中まわりの筋肉が緊張して固まり、血流が滞ります。
これは、姿勢を保つために背中の筋肉が同じ張力を保ち続ける「アイソメトリック収縮」に関係しています。筋肉は本来、伸び縮みを繰り返すことでポンプのように血液を送り出しますが、アイソメトリック収縮では筋肉の長さがほとんど変わらないため、このポンプ作用が働きにくくなります。
アイソメトリック収縮とは?
筋肉は、水を含んだスポンジのようなものです。スポンジをずっと同じ強さで握りしめていると、中の水は動きません。けれども、握ったり緩めたりを繰り返すと、水がポンプのように押し出され、また新しい水が吸い込まれます。姿勢を保っているときの筋肉も、これと同じ状態です。ずっと同じ力で支え続けているため、血液を送り出すポンプの働きが止まってしまうのです。
結果として、姿勢を支える筋肉そのものが血流不足に陥り、疲労物質が排出されにくくなって、痛みやだるさにつながります。
実際、お客様との会話でも「デスクワーク中、少し席を立って身体を動かしたら背中の重さが軽くなった」という声も聞きます。同じ姿勢を続けないことが、背中の痛みを防ぐための第一歩になります。
猫背・巻き肩が背骨や関節に与える負担
長時間のデスクワークは猫背や巻き肩になりやすく、それにより背骨や関節に大きな負担を与えます。
なぜなら、パソコン作業特有の腕を前に伸ばしてキーボードやマウス操作する姿勢が続くことで、胸の筋肉(大胸筋)が縮こまり、肩が内側に入り込む「巻き肩」の状態になりやすくなるからです。肩が内側に入ると、それを補うように背中も丸まりやすくなり、猫背にもつながっていきます。

こうして、本来複数の骨や筋肉で支えるはずの負荷が背中の一部分に集中してしまい、血行不良を起こし、痛みを誘発する可能性があるのです。
身体の歪み・重心バランスの崩れ
身体の歪みや重心バランスの崩れが原因で、背中の痛みが誘発することがあります。
身体は本来、左右対称に近い形で重さを支えるようにできています。しかし、片側の筋肉ばかりに支える負担を強いると、左右の筋肉の使われ方に偏りが生じます。長年の積み重ねで、背骨がわずかに傾いたり捻れたりし、特定の筋肉に慢性的な負担がかかって、結果的に痛みにつながるのです。
日常でこのようなことを無意識に行っていないか確認してみましょう。
- 利き手側に体重をかけて座る
- 脚を組む
- 頬杖をつく
完全に防ぐことは難しいですが、普段から少し意識してみるとよいでしょう。
かい施術をしていると、左右どちらかに姿勢が偏っている方がほとんどです!だからこそ、先ほどのチェックリストのように「どんな癖があるか」を知っておくとよいでしょう。
背中の痛みを和らげる対処法4選
ここでは、すぐ実践できる対処法について紹介していきます。
- 長時間座らない
- デスクの合間にできるストレッチ
- 正しい座り方
- デスク環境の調整
実践できそうなものから取り入れてみてください。
長時間座らない
長時間同じ姿勢で座らず、こまめに休憩を入れましょう。理想として30分に一度、2分程度立ち上がって軽く身体を動かしてください。
実際、座り続けると脳への血流が低下し始めることが研究で示されており、30分に一度、2分程度の軽い歩行を挟むだけでもその低下を防げると報告されています(Carter et al., 2018)。座りっぱなしが身体全体の巡りに影響する一例といえるでしょう。
| 座り方のパターン | 内容 | 脳血流への影響 |
|---|---|---|
| 座りっぱなし | 4時間、動かず座り続ける | 血流が低下 |
| 30分に1回、2分歩く | こまめに短い休憩を挟む | 血流の低下を防止 |
| 2時間に1回、8分歩く | まとめて長めに休憩を挟む | 低下を十分に防げなかった |
さらに、休憩の合計時間はほぼ同じでも、まとめて長く休むより、こまめに短く動く方が効果的でした。休憩は「長さ」より「頻度」が重要だといえます。
デスクの合間にできるストレッチ
猫背・巻き肩で縮こまった胸の筋肉(大胸筋)を伸ばすには、胸を開くストレッチが効果的です。


両手を頭の後ろで組み、肘を大きく開きながら、ゆっくりと胸を張るように上体を反らします。このとき、腰ではなく胸から反ることを意識してください。腰を強く反らせたり、肩に鋭い痛みを感じたりする場合は、すぐに中止しましょう。
深呼吸に合わせて5回ほど繰り返すと、縮こまっていた胸の筋肉がじんわりと伸び、肩甲骨まわりの緊張もゆるんでいくのを感じられるはずです。
正しい座り方
猫背や巻き肩を防ぐには、正しい座り方の見直しに注目するとよいでしょう。
とくに、骨盤の角度がポイントです。骨盤が後ろに倒れると、それを補うように背中全体が丸まりやすくなり、結果として肩も内側に入り込んでしまいます。
椅子に浅く腰掛け、坐骨(お尻の下にある骨)で座面を捉えるように骨盤を立てて座ると、背骨が自然なS字カーブを描きやすくなります。骨盤が安定すると、その上にある背中や肩の位置も自然と整いやすくなり、猫背・巻き肩の予防につながります。


座り方の基本については、デスクワークで腰が痛い方向けの記事でも詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。


デスク環境の調整
デスク環境の改善も、猫背・巻き肩を防ぐのに役立ちます。
デスク環境の改善ポイントは次のとおりです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| モニターの位置 | 上端が目線と同じ高さ、またはやや下 |
| 机の高さ | 肘が90〜110度に曲がる位置 |
| 椅子の高さ | 足裏がしっかり床につく高さ |
まず、モニターの位置が低いと、画面を見るために無意識に首を前に突き出し、頭が前に出た姿勢が続きます。
この状態が続くと、それを支えるために肩や背中の筋肉に負担がかかり、巻き肩を助長してしまいます。目安として、モニターの上端が目線と同じ高さか、やや下にくるように調整しましょう。ノートパソコンの場合は画面位置を上げにくいため、スタンドや台に乗せて高さを合わせるのがおすすめです。
次に、机が高すぎるとキーボードを打つたびに肩がすくみ、低すぎると前かがみになりやすくなります。キーボードは、肘が90〜110度程度に曲がる位置に置くと、肩に余計な力が入りにくくなります。
椅子の高さも足裏がしっかり床につくように調整しましょう。足が浮いた状態が続くと、姿勢を保つために背中や肩の筋肉が余計な負担を強いられます。



まずは1つ、今日から続けられそうなものから始めていきましょう!
睡眠環境の見直し
日中のセルフケアと合わせて見直したいのが、睡眠環境です。
猫背や巻き肩によって縮こまった胸の筋肉や緊張した首・肩甲骨まわりの筋肉は、本来睡眠中にゆっくりと回復します。
しかし、枕の高さが合っていないと、寝ている間も首が不自然に傾いたままになり、首から肩甲骨にかけての筋肉が緊張しっぱなしです。これでは、日中どれだけ姿勢に気をつけても、身体がリセットできません。
さらに、枕が高すぎると首が前に押し出されて猫背に近い状態になり、低すぎると頭が反り返って喉や首の前側に負担がかかります。目安として、仰向けに寝たときに首の骨(頸椎)が緩やかなカーブを保てる高さが理想です。


「朝起きた時点ですでに背中が痛い」という方は、枕が合っていないサインかもしれません。枕選びのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。





枕は消耗品ですので、使い始めてから2〜3年経っている方は、一度高さを見直してみるのもおすすめです。
運動不足による筋力低下
姿勢の崩れに加えて、「運動不足による筋力低下」も背中の痛みを悪化させる原因になります。
とくに、有酸素運動には全身の血流を促し、筋肉に溜まった疲労物質の排出を助ける働きがあるため、軽いウォーキングを日常に取り入れるだけでも背中の重だるさが和らぎやすくなります。
また、巻き肩は、縮こまった大胸筋に対して、肩甲骨を寄せる働きを持つ僧帽筋中部・菱形筋が弱まることでも起こります。これらの筋肉は、シーテッドローやフェイスプルのように、身体を手前に引き寄せる種目で鍛えることができます。あわせてデスクワークにおすすめの体力作りメニュー3選もチェックしてみてください。


しかし、いきなり自己流でトレーニングを始めると、フォームが崩れてかえって背中に負担をかけてしまうこともあります。まずはパーソナルトレーニングなどを利用して、自分の姿勢のクセや弱っている部分をプロに見てもらうのも一つの方法です。無理なく身体を動かす習慣を取り戻すきっかけにしてみてください。



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こんな症状があったら医療機関へ
ここまで紹介したセルフケアは、デスクワークによる一般的な背中の痛みを想定した内容です。次のような症状がある場合は、セルフケアだけで様子を見ず、早めに整形外科など医療機関を受診してください。
- 安静にしていても痛みが引かない、むしろ夜間や早朝に痛みが強くなる
- 腕にしびれや広がるような痛み(放散痛)がある
- 突然、経験したことのないような激しい痛みに襲われた
- 転倒などのケガをきっかけに痛みが始まった
- 発熱を伴っている
- 1ヶ月以上、痛みが続いている
医療機関では、これらは注意すべきサイン(レッドフラッグ)とされています。自己判断でストレッチや運動を続けると症状を悪化させてしまう可能性があるため、思い当たる症状がある方はセルフケアより先に医療機関へ相談することをおすすめします。



セルフケアで様子を見ていい状態かどうかを、まず見極めることが何より大切です。
背中が痛い人におすすめのデスクワークグッズ
ここでは、背中が痛い人におすすめのデスクワークグッズについておおまかに紹介します。
椅子
猫背・巻き肩を防ぐには、椅子選びも重要なポイントです。
背もたれの角度やランバーサポート(腰当て)を調整できる椅子は、骨盤を立てた姿勢を保ちやすく、背中が丸まるのを防いでくれます。座面の高さは、足裏が床につく位置に調整しましょう。
クッション
背もたれと腰の間にできる隙間を埋めるクッションは、骨盤を立てた姿勢をキープする助けになります。
骨盤が安定すると、その上にある背中や肩の位置も整いやすくなるため、猫背・巻き肩の予防にもつながります。タオルを丸めて代用することもできます。
ストレッチグッズ
マッサージボールやストレッチポールは、巻き肩によって緊張しがちな僧帽筋や菱形筋など、肩甲骨まわりの筋肉をほぐすのに役立ちます。デスクの下に置いておけば、休憩のたびに気軽に使えます。
選ぶときのポイントは、次のとおりです。
| グッズ | 選ぶときのポイント |
|---|---|
| 椅子 | 背もたれの角度・ランバーサポートの調整幅があるか |
| クッション | 高さや厚みを調整できるか、滑りにくい素材か |
| ストレッチグッズ | 硬さを選べるか(初めての方は柔らかめがおすすめ) |
全部を一度に揃える必要はありません。まずは今使っている椅子にクッションを1つ足すだけでも、座り姿勢は変わります。物足りなければ、ストレッチグッズを追加してみてください。



大切なのは値段や機能ではなく、毎日続けられるかどうかです。まずはタオルなど、家にあるもので試してみるのもおすすめです。
よくある質問
ここでは、背中の痛みに対するセルフケアについて、よくある質問をまとめています。
- スタンディングデスクは背中の痛みにも効果がある?
-
有効な選択肢です。
ただし、立ちっぱなしも別の負担につながるため、座位と立位をこまめに切り替えて使うのがおすすめです。
- マッサージガンは使ってもいい?
-
問題ありません。
ただし骨の近くや、痛みが強い部分に直接強く当てるのは避け、筋肉の柔らかい部分に軽く当てる程度にとどめましょう。
- どのくらいの期間で改善を感じられる?
-
個人差はありますが、早い方で数週間、一般的には4〜8週間ほど続けることで変化を感じ始める方が多いです。
姿勢と環境の見直しを継続することが前提になります。
- 猫背矯正グッズは効果がある?
-
装着中は、正しい姿勢を保ちやすくなります。
ただし、長時間・受動的に頼ると背筋や体幹の筋力低下につながる恐れがあります。1日10〜30分程度の短時間から始め、慣れても2〜3時間程度にとどめ、就寝時の着用は避けましょう。
- セルフケアだけで改善しない場合、整体やマッサージに通った方がいい?
-
専門家によるケアを取り入れるのも一つの方法です。
自分では気づきにくい姿勢のクセや筋肉の状態を客観的に見てもらうことで、セルフケアの精度も上がります。ただし、しびれなど強い症状を伴う場合は、整体より先に医療機関を受診してください。



どれも今回紹介した基本のセルフケア(姿勢・休憩・睡眠環境)があってこそ効果を発揮するものです。
まとめ:背中の痛みは”姿勢”と”生活習慣”で改善できる
まとめると、背中の痛みは普段の姿勢と生活習慣で予防が可能です。改めて、本記事のまとめを振り返っていきましょう。
- 長時間同じ姿勢による筋肉疲労と血流悪化
- 猫背・巻き肩による背骨や関節への負担
- 体の歪み・重心バランスの崩れ
そして、対処法のポイントは次のとおりです。
- 長時間座らない
- デスクの合間にできるストレッチ
- 正しい座り方
- デスク環境の調整
背中の痛みは、日中のセルフケアだけで完結するものではありません。
猫背や巻き肩で縮こまった筋肉は、眠っている間にどれだけ緩められるかによっても状態が変わりますし、そもそも身体を支える筋力が不足していれば、同じ生活を続ける限り負担はまた蓄積していきます。
本記事で紹介した4つのポイントを意識することが、痛みを繰り返さないための近道です。今日紹介した内容の中から、まずは一つだけでも試してみてください。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。背中の痛みは、日々の積み重ねで良くも悪くもなるものです。今日からできることを、少しずつ試してみてください。
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