「運転が長かったせいか、仕事のあとは腰が痛い」
お仕事で運転が多い方から、よくこういう話を伺います。
私はリラクゼーションセラピストとして10年近く、のべ10,000時間の施術をしてきました。
トラックや配送のお客様も多く、営業で運転時間が長い方もいらっしゃいます。腰だけでなく、肩首周りや背中まで張っていて、足がむくんでいる方も目立ちます。
この記事では、運転の腰痛対策を厚生労働省の資料をもとにまとめました。厚生労働省は、運送業に向けた資料を2本出しています。
資料で求められていることは、正しく座ることではなく、座席の角度を変えたり、降りたあとに腰を伸ばしたりすることです。
- 背もたれは垂直から少し倒す
- 腰と座席の隙間にクッションを入れる
- 座席は倒し過ぎず、後ろに引き過ぎない
- 小休止では車両から降りて腰を伸ばす
- 降りたら数分は立って、腰を伸ばしてから動く
長時間座り続けると腰にかかる圧力が高まり、そこへ車両の振動も加わります。座り方を意識するだけでは解決できません。
運送業では、腰痛の件数が統計に出ています。

この6年間、大きく減少していないことがわかります。さらに、休業4日以上という条件がつくため、休まずに働いた場合は数字に含まれません。
運送事業を含む運輸交通業において発生する業務上疾病のうち、約8割を腰痛が占めています。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
示されている数字は、業務上の病気の内訳です。
とくに運送業では、腰痛にならない工夫が日々求められます。
- 資料が示す運転の腰痛対策5つ
- 運転で腰が痛くなる3つの理由
- 腰痛ベルトを運転中につけるべきか
- クッションを選ぶときの考え方
仕事で運転の時間が長い方にこそ、最後までご覧いただきたい内容です。
資料が示す運転の腰痛対策5つ
運転の腰痛対策は、5つに整理できます。
腰痛の指針には作業の種類ごとに章があり、運転にあたるのが「車両運転等の作業」の章です。
順に見ていきます。
対策①|背もたれは垂直から少し倒す
背もたれは、垂直からわずかに倒した角度に合わせます。
垂直のままよりも、腰にかかる圧力が小さくなるからです。
運送業の予防テキストに、2つの角度を比べた記述があります。
座席の背もたれの角度が90度に比べ、95度の方が腰椎の椎間板にかかる圧力は減少します
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
90度とは、床に対して垂直な状態です。そこから5度倒すだけで、背骨のクッションにかかる圧力は小さくなります。
資料が示しているのは、腰部の負担を減らせるという点です。背もたれの使い方は次のように触れています。
座席の背もたれを有効活用し、体重をうまくあずけることにより腰部の負担を減らすことができます。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
前提は、背もたれに体重を預けることです。
背中が離れると、倒した角度が活かされません。
さらに、運送業の講習テキストは別の基準を挙げています。
背もたれ角度が10~30度未満が腰痛等防止の観点から望ましい
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」(柴田 JNOSH-SRR-No.42:2012)
この10〜30度は、垂直から後ろへ倒す角度です。垂直基準に直すと100〜120度になるという意味でした。
角度の数値は、2つの資料で違います。一方で、垂直のままにしない点では、どちらも同じ向きを示しています。
運転のしやすさを損なわない範囲で角度を合わせましょう。
対策②|腰と座席の隙間にクッションを入れる
腰と座席の隙間には、クッションを入れるのがおすすめです。
隙間が埋まると、どの角度でも腰にかかる圧力が小さくなるからです。
運送業の予防テキストでは、次のように説明しています。
座席に座った際にできる腰部と座席の隙間にクッション等が挿入された場合で、すべての角度でクッションがある方がない場合に比べて圧力は減少します
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
注目したいのが「すべての角度で」という部分です。
倒した場合も倒していない場合も、クッションを入れたほうが圧力は小さくなります。
さらに、クッションには振動を抑える役割もあるとされています。
運転開始前に適性な調整を行うこと、クッション等を用いて振動の軽減を図ること。
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」
車両の座席と身体が合わない場合でも、クッションなら自分で用意できます。
厚みについて、次のように触れています。
薄いクッションを複数重ねることが有効
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」(陸災防:陸運と安全衛生 No.599)
厚いもの1枚ではなく、薄いものを重ねることです。
デスクワークで使うクッションの当て方は、腰痛クッションの選び方にまとめました。
腰との隙間を埋めるという考え方は、運転席でも共通します。

対策③|座席は倒し過ぎず、後ろに引き過ぎない
座席は、倒しすぎも引きすぎもおすすめできません。
運送業の予防テキストが、調整のポイントを3点挙げているためです。
- 座席は倒し過ぎず、後ろに引き過ぎない
- 背もたれに背中をフィットさせる
- 腕と足は伸ばし過ぎないようにする
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」をもとに作成
3つのポイントは、同時に満たさなければなりません。
背もたれを倒すと、ハンドルとペダルが遠くなります。同時に腕と足を伸ばすことになり、背中が背もたれから離れていくからです。
倒した角度を生かすには、座席の前後位置もあわせて動かす必要があるでしょう。
席を合わせたあとに、もう1点確かめるべきことがあります。
運転開始前に、操作性や運転の安全性を配慮した上で、運転座席の座面角度や背もたれ角度を腰部への負担の少ない状態に調節し、さらに、腰背部の支持が適切な状態にあることを点検・確認します。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
角度を変えたあと、腰が座席に当たっているかどうかまで確認するのがポイントです。
対策④|小休止では車両から降りて腰を伸ばす
小休止では、一度車両から降りることが勧められています。
運送業の予防テキストが、降りることまで含めて記載しているからです。
小休止・休息の際は、車両から降りて背伸びなどの軽い運動をして、筋収縮による疲労の回復を図りましょう。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
具体的な動作は、背伸びなどの軽い運動です。腰痛の指針も、車両から降りてストレッチングを行うよう求めています。
シートを倒して休む形では、座席に預けた姿勢が続きます。座り続けた時間をいったん区切るために、車の外で立ち上がってみるのがおすすめです。
ただ、具体的な回数は示されていません。車両運転等の章には「適宜」のみの記載です。立ち作業の章には「おおむね1時間につき1、2回程度」と数字がありますが、運転には同じ記述がありません。
対策⑤|降りたら数分は立って、腰を伸ばしてから動く
車から降りたら、数分は立って腰を伸ばすのがおすすめです。振動を受けたあとは、立ったときのバランスが崩れた状態になっているからです。
運送業の講習テキストに、身体の状態が2つ挙げられています。
- 立ったときのバランスが崩れやすくなる
- 歩行時につま先が十分に上がらない
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」(陸災防:陸運と安全衛生 No.599)をもとに作成
なぜそうなるのかまでは、資料に書かれていません。
出どころをたどると、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の広報誌「陸運と安全衛生」でした。研究報告ではないため、何人を調べた結果なのかまでは分かりません。
資料は、続けて次のようなことを求めています。
このことから、運転などで長時間座位にて振動にばく露した際は、転倒などを起こしやすい状態になっているため、直ちに荷役作業を行わず少なくとも数分間は立った姿勢で腰を伸ばすことが重要
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」(陸災防:陸運と安全衛生 No.599)
資料には「少なくとも数分間」と記載されています。
荷台に回り、扉を開け、台車を出すまでに数分は取れるでしょう。その時間を、立って腰を伸ばすことに充てられます。
荷物を扱う場合は、持ち上げる前に数分時間をおくのが無難です。
指針も、順番を示すだけで作業そのものは止めていません。
長時間車両を運転した後に重量物を取り扱う場合、小休止・休息及びストレッチングを行った後に作業を行わせること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
もう1つの資料には、このとき身体に起きていることが書かれています。
長時間の拘束姿勢による末梢血液循環の阻害や一時的な筋力調整不全も、好ましくない腰部への負担となります。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
血のめぐりが悪くなり、力の加減がうまくいかなくなるという意味です。バランスが崩れる理由として書かれたものではありません。
同じ資料では、荷物を扱うタイミングにも触れています。
運転直後に重量物を取扱うことは好ましくありません。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
降りた直後に重い荷物を持つことは、3つの資料で避けるように言及されています。
荷物がない場合も、降りた直後は足元が不安定なので注意が必要です。
かい仕事で運転が多いお客様も、張っている場所はデスクワークの方と大きくは変わらないという印象です!
姿勢がしばらく変わらないという点が共通しているのかもしれません。
運転で腰が痛くなる3つの理由
運転で腰が痛くなる理由を、3つに絞って解説します。
腰痛は複数の要因が重なって起こるため、資料に記述があるものだけを選びました。
腰痛の指針は、運転の腰痛に関わる要因を7つ並べています。
長時間の車両運転等に従事する労働者の腰痛の発生には、「作業姿勢・動作」「振動ばく露及びばく露時間」「座席及び操作装置等の配置」「荷物の積み卸し作業」「作業場の環境」「組織体制」「心理・社会的要因」等の様々な要因が関与していることから、これらを的確に把握すること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
本記事では最初の3つを扱います。
荷物の積み卸しは重量物取扱いの章に分かれ、組織体制と作業場の環境は会社が決める部分だからです。
残る心理・社会的要因には、運送業の予防テキストに具体例があります。
「交通渋滞などで荷物を時間どおりに届けることができない」「街中の運転では過度に神経を使う」などといったストレスや精神的な緊張が労働者にかかる場合、腰痛を訴える比率が高くなったり、支障度の高い腰痛が長引いたりする、との報告もあります。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
具体的に挙げられているのが、渋滞と街中の運転です。座り方だけの話ではないと、資料も認めています。
それぞれ見ていきます。
理由①|座り続けることで腰に負担がかかる
まずは、座ったままの姿勢が続くことです。
運送業の予防テキストが、運転を「強要」という言葉で説明しています。
長時間にわたる車両運転は、長時間の座位姿勢を強要し、車両運転に伴う全身振動が腰部に加わることなどともあいまって、腰部に過度の負担がかかり、腰痛が発生しやすくなります。
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
選んで座っているのではなく、座らざるを得ない状態を指した言葉です。
指針は、座っているときの姿勢も項目に挙げました。
座位での体幹の前屈・ひねり・反り及び不安定な姿勢、これらの頻度、同一姿勢での連続作業時間等
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
ハンドル操作では前に曲げ、ミラーの確認ではひねります。
安全運転の基本でもあるため、仕方ない部分はあるかもしれません。
理由②|車両の振動が腰に加わる
車両からの振動も、腰に負担をかけています。
腰痛の指針が、振動を腰痛の要因として挙げているからです。
運転座席の姿勢拘束と振動ばく露に起因して、長時間の車両運転等の作業は、腰痛を発生させるおそれがある。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
ここでは拘束姿勢と振動が並べて書かれています。
このうち振動は、デスクワークにはない要因です。指針は、振動を減らす手段を3つ挙げました。
座席の座面・背もたれやその角度の改善、振動を減衰する構造を持つ座席への改造、小休止や休息をはさむなどによる粗大な振動の軽減や振動の連続した長時間ばく露の回避等の配慮を行うことが必要である
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
つまり、「角度の改善」、「座席の改造」、「小休止」の3つです。
このうち運転手が自分でできるのは、角度の改善と小休止になります。
理由③|座席が身体に合っていない
座席が身体に合っていないことも、理由の1つです。
座席の状態そのものが腰痛に関わると、運送業の予防テキストに書かれています。
運転座席は、座面角度、背もたれ角度および腰背部の支持が適切な状態か否かが、腰痛の発生や症状の悪化に影響することから
引用:厚生労働省・中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」
大きく分けて次の3つです。
- 座面の角度
- 背もたれの角度
- 腰を支える状態
腰痛の指針は、確認するべき項目をさらに細かく並べました。
座面角度、背もたれ角度、腰背部の支持、座席位置、運転席まわりの広さ、計器盤表示の見易さ、振動の減衰能等
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(指針PDFの32ページ、別紙の解説「Ⅴ 車両運転等の作業」1の(3))
計器盤の見やすさも、ポイントの1つです。
表示が見にくいと身体を前に傾けることになり、姿勢が崩れていきます。
乗る人の身長や体格は、同じ車両でも違います。だからこそ、運転前に座席を合わせる項目が3つ並びました。



施術で触れてきた感想として、運転が多いお客様は足がむくんでいることが多いという印象です!
運送業の予防テキストに「末梢血液循環の阻害」という記述がありますが、因果を確かめたわけではありません。
座ったままの足のむくみについては、デスクワークの足のむくみにまとめました。


腰痛ベルトを運転中につけるべきか
腰痛ベルトの相性は人によって違います。
運送業の講習テキストが、全員に同じ使い方をさせないよう求めているからです。
腰部保護ベルトは、個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人毎に使用の適否を判断すること。
引用:中央労働災害防止協会 監修「令和元年度 腰痛予防対策講習(陸上貨物運送事業)」
腰痛の指針は、専門家の見解が分かれていることにも触れています。
腰部保護ベルトの腹圧を上げることによる体幹保持の効果については、見解が分かれている。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
さらに、外したあとには次のようなことも起こります。
職場では、装着により効果を感じられることもあるが、腰痛がある場合に装着すると外した後に腰痛が強まるということもある。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
つけているあいだラクになっても、外したときに腰の痛みが強まることがあると書かれています。
運転中だけ装着し続ける使い方が安心とは言えません。
どこに相談すればよいかも、指針に書かれています。
個人毎に効果を確認してから使用を考え、必要に応じて産業医(又は整形外科医、産婦人科医)に相談することが適当である。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
産業医のほかに、整形外科と産婦人科が挙げられています。使う場合は、医師に相談してから決めましょう。
腰痛ベルトについては、立ち仕事の腰痛対策でも書いています。





私が持っているのは民間資格で、診断ができる立場ではありません!
そのため、ベルトを使ってよいかどうかについて正確な回答ができません。
公的な資料に、クッションの選び方は書かれていない
公的な資料にあるのは、クッションの使い方だけです。
どれを選ぶべきかという基準は示されていません。
- 腰と座席の隙間を埋めると、どの角度でも腰にかかる圧力が小さくなる
- 薄いクッションを複数重ねるという記述がある
- 車両の振動を抑える目的でも挙げられている
3つとも、使い方についてです。
素材や硬さなどについて、公的な資料に基準はありません。
具体的な商品を挙げませんが、手元にある座布団やタオルで隙間を埋める形でも、資料が示した条件は満たせます。
薄いものを重ねる方法のメリットは、厚みを変えて試せることです。
1枚で合わなかった場合、枚数で調整できます。
運転中は立てないからこそ、筋力を維持する
腰を支える筋力を維持するのも、腰痛対策の1つです。
指針が挙げている腰痛の要因のうち、運転では変えられるものが限られるからです。
順にお伝えします。
根拠①|指針が、腰痛の要因に「筋力」を挙げている
腰痛の要因には、筋力が入っています。指針の冒頭に、次のとおり並べられているからです。
腰痛の発生要因には、腰部に動的あるいは静的に過度の負担を加える動作要因、腰部への振動、温度、転倒の原因となる床・階段の状態等の環境要因、年齢、性、体格、筋力、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症等の既往症又は基礎疾患の有無等の個人的要因、職場の対人ストレス等に代表される心理・社会的要因がある。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(指針PDFの1ページ、「1 はじめに」)
要因は、全部で4つです。
- 動作要因
- 環境要因
- 個人的要因
- 心理・社会的要因
筋力は個人的要因です。
つまり腰痛対策には、環境を変えるパターンと自分の身体を変えるパターンの2つがあります。
根拠②|運転環境を変えるだけでは限度がある
実際に、運転環境を変えるだけでは限界があります。座る時間も姿勢も、仕事の内容で決まっているからです。
資料も、運転の座り方を強い言葉で書いています。
運送業の予防テキストが「長時間の座位姿勢を強要し」、指針が「拘束姿勢」です。立ち作業の章には椅子を置くという対策がありますが、運転席に同じ方法は使えません。
座り続ける長さにも、国が決めた上限があります。
厚生労働省は平成12年に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を改正し、運転者の過労防止のために、バスやタクシー、トラックの事業用自動車の運転者の勤務時間や乗務時間に係る基準を策定し、連続運転時間では4時間を超えないよう定めている。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
対象は「事業用自動車の運転者」です。具体的にバス、タクシー、トラックに乗る方が当てはまります。
4時間という数字は、運転手を守るために置かれた上限でした。
同時に、最長4時間は座り続ける前提で働いていることも意味します。この管理は会社に課せられていて、運転手の側で短くできる数字ではありません。
営業で社用車を運転する場合、この基準の対象には含まれていません。4時間で区切るかどうかは、自分の判断になります。
座り仕事全般の負担については、デスクワークの腰痛対策にまとめました。


根拠③|筋力は自分で対策ができる
個人的要因のうち、自分で対策できるのは筋力です。
指針が個人的要因に並べていたのは、年齢、性、体格、筋力、既往症の有無でした。
個人的な問題も含まれるため、体格や筋力しか変えられません。
このうち、運動で高められるのが筋力です。頻度の目安は、厚生労働省の運動ガイドに示されています。
筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨する(週4メッツ・時の運動に含めてもよい)。
引用:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
毎日ではなく、週に2回か3回です。身体の動かし方そのものは、デスクワークの運動不足にまとめました。


筋力だけで腰痛を防げるわけではない
正直にお伝えすると、筋力を維持すれば運転の腰痛が防げる、と書かれた公的な資料は見当たりません。
腰痛の要因は4つに分かれていて、筋力はそのうちの1つだからです。
指針が挙げているのは要因であって、筋力を保てば防げるという因果ではありません。腰痛予防体操の目的にも、筋力は入っていません。
適宜、筋疲労回復、柔軟性、リラクセーションを高めることを目的として、腰痛予防体操を実施させること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
一方で学会は、腰を支える力について書いています。
中腰にならないなど日常的姿勢に注意し、また腰の支持性を高めるための運動や体操を継続されるとよいでしょう。
引用:日本整形外科学会「腰痛」
腰をほぐすのではなく、支える側を増やすという意味になります。
したがって筋トレは、座席の調整や小休止の代わりにはなりません。
筋トレの始め方について、学会は次のように書いています。
個々の状態に応じた体操や運動のプログラムについては、整形外科でご相談されることをお勧めします。
引用:日本整形外科学会「腰痛」
自己流で続けて合わなかった場合、続かなくなりがちです。はじめに一度プロに確かめてもらえば、合わない形で続けずに済むでしょう。
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運転手の方は、デスクワーカーよりも強制的に座らざるをえない状態だと感じています。
だからこそ、普段から下半身の筋肉を維持しておく必要があると考えています。
資料に書かれていることではなく、施術をしてきた中での私の考えです!
医療機関を受診する目安
次の症状があるときは、座席の調整より先に整形外科へご相談ください。
この記事が扱うのは、運転の負担から起こる腰の痛みです。次の症状は、それとは分けて考える必要があります。
- 安静にしていても痛みが軽くならない
- 痛みがしだいに悪化している
- 発熱している
- 下肢がしびれる、力が入らない
- 尿漏れがある
5つの症状は、日本整形外科学会が挙げているものです。
安静にしていても痛みが軽くならない、しだいに悪化する、発熱している、下肢がしびれたり力が入らない、尿漏れがするなどの症状を伴っている場合は、放置したり自分で管理することは禁物で、すみやかに整形外科を受診されることをお願いします。
引用:日本整形外科学会「腰痛」
放置したり自分で管理することは禁物と書かれています。
とくに足のしびれや、力が入らない感じは、ペダルの操作にも関わる症状です。
思い当たるものがあれば、運転を続ける前に受診をご検討ください。
会社で受けられる腰痛の健康診断についても、腰痛の指針に記述があります。
重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次のとおり医師による腰痛の健康診断を実施すること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
6か月以内ごとに1回という頻度です。
ただし、重量物取扱いと介護・看護が対象とされており、車両運転は入っていません。
対象者の目安には、「腰痛が発生し、又は腰痛の愁訴者が見られる等の作業に常時従事する労働者」とも書かれています。
荷物の積み卸しを担っている場合や、職場に腰痛の方がいる場合は、会社に実施の有無を確かめてみましょう。
運転の腰痛についてよくある質問
運転の腰痛について、よく調べられている質問をまとめました。
- トラック運転手におすすめの腰痛対策クッションはありますか?
-
商品名を挙げられる資料がありません。
公的な資料にあるのは「隙間を埋めると腰にかかる圧力が小さくなる」「薄いクッションを複数重ねる」という使い方だけです。素材や硬さの基準はないため、手持ちのもので隙間を埋める形から試してみましょう。
- 腰痛ベルトは運転中につけても大丈夫ですか?
-
合うかどうかは人によって違います。
運送業の講習テキストが求めているのは「個人毎に使用の適否を判断すること」です。腰痛の指針には、腰痛があるときに着けると外した後に腰痛が強まることもあると記されています。使う場合は医師にご相談ください。
- 運転中に腰が痛くなったときはどうすればよいですか?
-
車を止めて、車両から降りてください。
腰痛の指針は、小休止の際に車両から降りてストレッチングを行うよう求めています。シートを倒して車内で休む形では、座席に預けた姿勢が続きます。痛みが引かない場合は整形外科へご相談ください。
- 長距離運転で腰痛にならないためにはどうすればよいですか?
-
運転前の座席の調整と、降りたあとの数分を組み合わせます。
背もたれを垂直から少し倒し、腰と座席の隙間にクッションを入れておきましょう。そのうえで、降りてから数分は立って腰を伸ばしてから荷物を扱います。運送業の講習テキストは、振動を受けた直後の身体は転倒を起こしやすい状態だとしています。
- 運転の腰痛は労災になりますか?
-
会社や労働基準監督署の窓口へご相談ください。
本記事が扱っているのは腰痛の予防対策で、労災の認定については触れていません。厚生労働省は腰痛予防を事業者の責務としていますが、個々の認定は窓口での手続きです。
- ストレッチをすれば運転の腰痛はよくなりますか?
-
ストレッチだけでは足りません。
腰痛の指針は腰痛予防体操の目的を「筋疲労回復、柔軟性、リラクセーション」としていて、筋力をつけることとは書いていません。一方で日本整形外科学会は「腰の支持性を高めるための運動や体操を継続されるとよいでしょう」としています。座席を合わせることと、自身の筋力を維持することの両方が必要です。
まとめ:「座席の角度」と「降りたあとの数分」が運転の腰痛対策の基本
運転の腰痛について、押さえておきたい点を振り返ります。
- 背もたれは垂直のままにせず、少し倒して体重を預ける
- 腰と座席の隙間にクッションを入れると、どの角度でも圧力が小さくなる
- 小休止では車内に残らず、車両から降りて腰を伸ばす
- 降りた直後は転倒を起こしやすいため、数分立ってから荷物を扱う
- 腰痛ベルトは人によって合うかどうかが違うため、医師と相談してから決める
この記事の前提にあるのが、運転の腰痛は座り方だけで起きていないという点です。資料で言及されているのは、拘束姿勢と振動の2つでした。
振動を減らす方法は、座席の角度とクッションに限られます。だからこそ、降りたあとの数分が大切です。
座る時間の長さは、荷主との約束や配送の計画で決まるものです。
一方で、運転前に座席を合わせることと、降りたあとに数分立つことは今日から始められます。
安静にしていても痛む場合や、足に症状があるときは、整形外科へご相談ください。



ここまでお疲れ様でした!
運転のお客様には、降りたあとの行動が大事だとお伝えしています。短い時間でも、座っていた姿勢をいったん変えることに意味があると考えています。





