「夕方になると、腰が重くて座り直してしまう」
そんな状態で、毎日パソコンに向かっていないでしょうか。
腰の負担をやわらげる道具として使われているのが、腰痛クッションです。厚生労働省の指針にも、座面の高さや背もたれの角度を調整できる椅子が望ましく、それができない場合には適当な腰当てを使用すると記載されています。
ただし、クッションは椅子より先に使うものではありません。指針が示している順番は、まず椅子を調整し、それができないときに腰当てを使うという流れです。判断の材料になるのは、いま座っている椅子がどこまで調整できるかという点です。
- 腰痛クッションが必要な人と、いらない人の違い
- クッションを使うと何が変わるのか
- 腰の後ろと座面で変わる役割
- 選ぶときに見るポイントと、家にあるもので試す方法
なお、この記事で扱うのはデスクワークで使うクッションです。車やトラックの運転席で使うものは、選ぶ基準が違うため取り上げません。

デスクワーカーの処方箋 編集部
- 現役リラクゼーションセラピスト
- 2016年から累計10,000時間の施術実績有り
- 日本リラクゼーション業協会 リラクゼーションセラピスト検定1級
腰痛クッションが必要な人・いらない人
腰痛クッションが必要かどうかは、いま使っている椅子の状態で分かれます。ここでは、必要になる3つの状態と、必要にならない場合を取り上げます。
まずは、調整できない椅子を使っている場合から見ていきましょう。
必要な人①|椅子の高さや背もたれを調整できない人
座面の高さや背もたれの角度を変えられない椅子の場合、腰痛クッションはおすすめです。

なぜなら、厚生労働省の指針が、調整できる椅子を望ましいとしたうえで、それができない場合の代わりとして腰当てを挙げているからです。
椅子は座面の高さ、背もたれの角度等を調整できる背当て付きの椅子を用いることが望ましい。それができない場合には、適当な腰当て等を使用させること。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
調整できない椅子とは、座面の高さや背もたれを動かす仕組みがない椅子を指します。当てはまるのは次のとおりです。
- 会議室の椅子
- 家のダイニングチェア
- 折りたたみ椅子
在宅勤務で食卓に向かって仕事をしている場合も、同じ状態です。
椅子そのものを替えられるのであれば、その方法を優先してみるとよいでしょう。替えられない場合に、クッションで補うと考えてください。
必要な人②|背もたれと腰のあいだにすき間ができる人
背もたれに背中をつけても腰の後ろにすき間が残る場合も、腰痛クッションが必要になります。理由は、すき間があると背もたれに体重を預けられず、腰の後ろの筋肉が身体を支え続けることになるからです。

座面の奥行きが深い椅子で起こりやすい状態です。深く座ると背中が丸まり、浅く座ると背もたれに届かなくなります。どちらの座り方でも、腰の支えが足りなくなるのです。
確かめ方は簡単です。背もたれに背中をつけて座り、腰の後ろに手のひらを入れてみてください。手が入るようであれば、すき間が空いています。
必要な人③|座っているうちに前かがみになる人
しばらくすると前かがみになる人は、クッションを入れると姿勢を戻しやすくなります。
指針の解説でも、長時間座ると背中の筋肉が疲れて前傾姿勢になり、その対策の1つとして腰当てが挙げられています。
長時間、椅座位姿勢を続けると背部筋の疲労によって前傾姿勢になり、また、腹筋の弛緩、背柱の生理的彎曲の変化や大腿部圧迫の影響も現れる。この影響を避けるため、足の位置を変えたり、背もたれの角度を変えて後傾姿勢を取ったり、適宜立ち上がって膝を伸ばすほか、クッション等の腰当てを椅子と腰部の間に挿入する等、姿勢を整える必要がある。
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
ここで注目したいのは、腰当てが並んでいる位置です。
指針は、姿勢を整える方法として次の4つを挙げています。
- 足の位置を変える
- 背もたれの角度を変えて後ろに傾く
- 立ち上がって膝を伸ばす
- クッションなどの腰当てを椅子と腰のあいだに入れる
クッションだけで姿勢が保てるとは書かれていません。
椅子が身体に合っていれば必要ない
次の2つが当てはまるなら、クッションは必要ありません。
- 背もたれに腰をつけたまま座れる
- 座面の高さと背もたれの角度を調整できる
指針が望ましいとしている状態を、すでに満たしているからです。
逆に、この状態でクッションを足すと、座面が高くなって足の裏が床から離れることがあります。指針は、椅子の座面の高さについて、足裏全体が着く高さとするよう求めています。足元が浮けば、せっかく整っていた条件が崩れてしまうでしょう。

かいクッションを買う前に、背もたれの角度まで含めて、椅子のレバーを一通り動かしてみてください。
腰痛クッションで変わる3つのこと
クッションを入れると、腰の当たり方だけでなく座り方そのものが変わります。ここでは、3つの変化を取り上げます。
まずは、背もたれの使い方から見ていきましょう。
背もたれに体重を預けられる
腰の後ろにクッションを入れると、背もたれに体重を預けられます。なぜなら、すき間が埋まることで、背もたれと身体が面で接するようになるからです。


すき間が空いたままだと、背もたれに触れているのは肩甲骨のあたりだけになります。その状態では上半身の重さを腰で支えることになり、腰の後ろの筋肉が休めません。
背もたれに預けられる重さが増えれば、腰が支える分は減ります。クッションは、使えていなかった背もたれを、使える状態にする道具です。
背骨のカーブを保ちやすくなる
クッションは、背骨のカーブを保つ助けにもなる道具です。指針の解説では、長く座ることで背骨の生理的なカーブが変わると指摘されています。
腰の骨は、立っているときに前へゆるくカーブした状態です。座って骨盤が後ろに倒れると、このカーブが失われて背中が丸まります。骨盤が倒れきる前に止めてくれるのが、腰の後ろの支えです。


ただし、支えが強すぎると今度は反りすぎます。腰に当てたときに突っ張る感じがあるなら、クッションの厚みを減らしてください。
姿勢を変える手段が1つ増える
クッションの役割は、姿勢を変える手段を増やすことです。指針が挙げている方法は4つあり、クッションはそのうちの1つにあたります。
- 足の位置を変える
- 背もたれの角度を変えて後ろに傾く
- 立ち上がって膝を伸ばす
- クッションなどの腰当てを椅子と腰のあいだに入れる
残りの3つは、道具を買わずにできる方法です。クッションを入れたあとも、この3つは必要になります。
置いただけで姿勢が保たれるわけではありません。同じ姿勢が続けば、背中の筋肉は疲れていきます。



クッションを入れた日は、座り直す回数がどう変わったかを見てみてください。減っていれば、身体に合っています。
腰の後ろと座面で変わる役割
腰痛クッションは、置く場所によって役割が変わります。ここでは、2つの置き方と、両方を使うときの注意点を取り上げます。
まずは、腰の後ろに置く場合から見ていきましょう。
腰の後ろに置く場合は、すき間を埋めて支える
腰の後ろに置くクッションは、背もたれとのすき間を埋めるために使います。指針が腰当てと呼んでいるのも、この置き方です。
合わせる場所は、ベルトの高さのあたりです。高すぎると背中を押されて前へ出てしまい、低すぎるとおしりに乗って支えになりません。座ったまま上下に動かして、腰がいちばんラクな位置を探すとよいでしょう。


厚みは、すき間の分だけで十分です。分厚いものを入れると身体が前へ押し出され、机との距離が変わります。
座面に置く場合は、おしりへの圧を分ける
座面に置くクッションは、おしりの一点に集まる体重を分散させるためのものです。座面が硬い椅子や、長く座るとおしりが痛くなる場合に向いています。


ただし、座面に敷いても腰の後ろのすき間は埋まりません。腰の支えが足りないと感じるなら、腰の後ろに置くものが別に必要になります。
もう1点注意したいのは、座る位置が高くなることです。机との差が縮むため、肘の角度が90度より狭くなります。その場合は、椅子の高さを下げる必要があります。
両方を使うなら、足元の高さを確かめる
腰の後ろと座面の両方のクッションを使う場合、足元の高さを必ず確かめてください。座面が高くなったぶん、足の裏が床から離れることがあるためです。


指針は、椅子の座面の高さについて、足裏全体が着く高さとするよう記載しています。足が浮いた状態では、太ももの裏だけで身体を支えることになります。
椅子を下げると机が高くなりすぎる場合は、足元の側を上げるとよいでしょう。足台の選び方は、別記事にまとめています。


選ぶときに見る4つのポイント
必要な置き場所が決まったら、次は製品を選びです。ここでは、見ておきたい4つのポイントを取り上げます。
まずは、形の合わせ方から見ていきましょう。
ポイント①|形が椅子と身体のすき間に合っているか
最初に見るのは、形がすき間に合っているかどうかです。なぜなら、同じ腰当てでも、カーブの深さによって当たる場所が変わるからです。
背もたれがまっすぐな椅子には、ゆるいカーブのものが合います。背もたれがすでに反っている椅子に深いカーブのものを足すと、腰が押されすぎます。


売り場で試せる場合は、背中を預けた状態で腰に当ててみてください。通販で選ぶ場合は、製品の断面図と厚みの表示を見ます。
ポイント②|座ったときに沈み込みすぎないか
硬さは、座ったときに沈み込みすぎないかどうかで見ます。沈むと骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まってしまうためです。


低反発と高反発のどちらがよいかについては、公的な資料に記載がありません。素材の名前で決めるより、座ったときに椅子の固さが伝わってこないかを確かめるほうが確実です。
座面に置く場合は、体重をかけて5分ほど座ってみてください。座り始めは快適でも、時間が経つとつぶれて硬さを感じる製品があります。
ポイント③|厚みとサイズが椅子に合っているか
厚みとサイズは、いま使っている椅子に収まるかどうかで選びます。なぜなら、座面からはみ出したり、ひじ掛けに当たったりすると、座る位置が毎回ずれるからです。
腰の後ろに置くものは、厚みがすき間の分に収まるかを見ます。座面に置くものは、幅と奥行きが座面に収まるかを見ます。


椅子の寸法を測っておくと、通販でも選べて便利です。座面の幅と奥行き、背もたれの高さの3か所を測れば足ります。
ポイント④|ずれ止めと手入れのしやすさ
長く使うのであれば、ずれ止めと手入れのしやすさも確かめてください。毎日使うなら、ずれを直す手間と洗う手間が積み重なりがちです。


腰の後ろに置くものには、椅子に固定するバンドが付いた製品があります。座面に置くものは、裏面のすべり止めを見ます。
カバーを外して洗えるかどうかも、見ておきたい点です。汗をかく季節は、通気性のある素材が快適に使えます。



売り場で試すときは、普段どおりの姿勢で座ってみてください。
背すじを伸ばして座ると、どの製品も良く感じられます。
買う前に家にあるもので試す
腰痛クッションは、買う前に家にあるもので試せます。
必要な厚みが分かってから選べば、合わないものを買わずに済むからです。ここでは、代わりに使えるものと、試したあとに見る点を取り上げます。
まずは、腰のすき間から見ていきましょう。
腰のすき間はバスタオルで試す
腰の後ろに必要な厚みを知るだけなら、バスタオルが適切です。丸める枚数と太さで、厚みを細かく変えられるからです。
まず1枚を丸めて腰に当て、背もたれに背中をつけて座ってみてください。すき間が埋まらなければ、もう1枚足します。押されすぎる感じがあれば、ゆるく巻き直します。


ちょうどよい太さが見つかったら、その直径を測っておくのがおすすめです。製品の厚みを選ぶときの目安になります。
座面の硬さは座布団で試す
座面に敷くクッションは、家にある座布団で代用できます。確かめたいのは、座ったときに椅子の硬さが伝わってくるかどうかです。
座布団が薄いと、体重で押しつぶされて椅子の硬さが伝わってきます。その場合は、もっと厚みのあるものが必要です。


ただし、座布団は長く座るとつぶれます。1日で判断せず、何日か使ってから決めてください。
試したあとに確かめる2か所
クッションを足すと、座る高さが変わります。試したあとは、次の2か所を確かめてください。
- 足の裏全体が床についているか
- 机に手を置いたとき、肘の角度が90度に近いか
どちらも指針に書かれている条件です。崩れていたら、椅子の高さで調整します。



丸めたタオルは座っているうちにほどけて、当たる位置が毎回変わります。
合う厚みが分かった時点で、形の崩れない製品に替えてください。
クッションを足しても変わらないとき
クッションを入れても腰の重さが続く場合、別の原因があります。ここでは、確かめたい3つのことを取り上げます。
まずは、受診を考える目安から見ていきましょう。
確認①|痛みの出方によっては受診を考える
安静にしていても痛みが引かない、足にしびれがある、発熱を伴っているといった場合は、道具で対処せず医療機関を受診してください。
これらは、日本整形外科学会と日本腰痛学会の腰痛診療ガイドラインで、注意すべきサインとして挙げられている症状です。
該当する症状と、受診の目安については別記事にまとめています。思い当たるものがある場合は、そちらを先に読んでください。


確認②|同じ姿勢の時間そのものを減らす
受診の目安に当てはまらない場合は、座り続けている時間を見直してください。指針が、長時間の座位作業では適宜立ち上がるよう求めているためです。
同じ指針には、腰椎にかかる力学的な負荷は、立っているときより座っているときのほうが大きいとも記載されています。クッションを入れても、座り続ける時間そのものは変わりません。
腰椎にかかる力学的負荷は、立位姿勢より椅座位姿勢のほうが大きい
引用:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
コピーを取りに行く、飲み物を入れに行くといった用事を、まとめずに分けるだけでも立つ回数は増えます。
確認③|腰を支える筋肉を動かす時間をつくる
道具と時間の両方を整えても腰の重さが残る場合、身体を支える筋肉の働きが落ちている可能性があります。座っている時間が長いほど、腰やおしりの筋肉を使う機会は減る一方です。
とはいえ、自己流で腰を鍛えようとすると、フォームが崩れて腰に負担がかかることがあります。最初に見てもらう機会をつくると、自分の身体に合った動かし方が分かるでしょう。
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デスクワークの腰痛クッションについてよくある質問
ここまでに触れられなかった疑問をまとめました。
- クッションは腰痛に効果がありますか?
-
痛みを取るための道具ではありません。
厚生労働省の指針では、調整できる椅子が望ましく、それができない場合の代わりとして腰当てが挙げられています。姿勢を整える手段の1つという位置づけです。 - 円座クッションは腰痛を悪化させますか?
-
悪化するかどうかを示した公的な資料は見当たりませんでした。
円座は中央に穴があいている形のため、おしりの一部に体重が集まります。座って腰が丸まる感じがあるようなら、別の形を試してください。 - 腰痛には低反発と高反発のどちらがいいですか?
-
素材の名前では決まりません。
判断の基準になるのは、座ったときに沈み込みすぎないかどうかです。沈むと骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まります。 - クッションが腰痛を悪化させることはありますか?
-
合わないものを使うと、腰の負担が増えることがあります。
厚みがありすぎて足の裏が床から離れる場合や、沈み込んで骨盤が後ろに倒れる場合です。使ってみて腰が重くなるなら、いったん外してください。 - 座りっぱなしでも腰痛にならないクッションはありますか?
-
ありません。
指針は、長時間の座位作業では適宜立ち上がるよう求めています。腰椎にかかる負荷は、立っているときより座っているときのほうが大きいとも記載されています。 - クッションはどこに置くのがよいですか?
-
腰の後ろと座面で役割が違います。
背もたれとのすき間を埋めたいなら腰の後ろ、座面が硬くておしりが痛くなるなら座面です。両方を使う場合は、足の裏が床につくかを確かめてください。
まとめ|腰痛クッションは椅子を調整してから考える
腰痛クッションが必要かどうかは、製品の良し悪しではなく、いま使っている椅子で決まります。この記事の内容を振り返ります。
- 椅子の高さや背もたれを調整できない場合、腰当てが代わりになる
- 背もたれと腰にすき間ができる場合や、前かがみになる場合も候補になる
- 椅子が身体に合っているなら、足す必要はない
- 腰の後ろはすき間を埋め、座面はおしりの圧を分ける
- 選ぶときは、形、沈み込み、厚みとサイズ、ずれ止めと手入れを見る
- 買う前に、バスタオルや座布団で必要な厚みを測る
まずは椅子のレバーを一通り動かし、座面の高さと背もたれの角度を調整してください。そのうえで腰にすき間が残るなら、家にあるもので厚みを試してから選びます。
座る環境が整ったら、次は身体を動かす時間です。座ったままの時間が長い生活から変えていきたい方は、体験から試せます。
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椅子と道具を整えたあとも、同じ設定のまま使い続けないでください。
季節で服の厚みが変わると、腰のすき間も変わります。








